2020
04.19

漢方薬とコロナウイルス

中医薬

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2020年3月19日に金沢大学より報告があった。

COVID-19感染症に対する漢方治療の考え方 小川恵子

(金沢大学附属病院漢方医学科)

学術論文なので、専門用語や中医学、漢方の知識がないと理解しにくいと思われるので、抜粋、平易な言葉でまとめさせていただいた。報告では、中国の感染者に現在医学のみと中医学の治療を併用した場合の比較をしたところ、後からの検証であるが、優位に治癒率が中医学を併用したほうが高かったという。(後述の清肺排毒湯の効果:治癒率は 90%以上)

漢方薬も医薬品であるので、実際の使用には、医師または薬剤師、登録販売士に相談していただきたい。

あくまで、一般の方に概略を平易な言葉でお伝えしようとする意図でお話しさせていだく。専門家の方や知識をお持ちの方は原文の方を確認していただきたい。

■中医薬と漢方薬の違い

中国の中医学は様々な生薬を組み合わせて、新たな処方を考える。一方、日本の漢方薬は、保険診療で認可されたエキス剤(エキス剤は生薬から有効成分を取り出したもの)を用いるのが主流である。

現在医学とは違ったアプローチで漢方薬は役立つと認識している。しかし、日本での漢方薬の使用には、中国と違い制度などの面で制限があるので、実際の現場で役立つ使い方として役立てていただければ幸いである。

■コロナウイルスに対する中医学処方(漢方薬)の状況と推奨

  • 1.予防(無症状病原体保有者)

手洗い、うがい、不要不急の外出を避けることは重要であるが、免疫力を高めることも重要。免疫力を高める漢方薬を使うと体内の免疫システムを活性化することができる。

●補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

動物実験であるが、インターフェロンの産生を抑制するという報告がある。

●十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)

ヒトにおいて、NK細胞(ナチュラルキラー細胞:がん細胞やウイルス感染細胞などを見つけ次第攻撃するリンパ球)機能を改善する。

  • 2. ●清肺排毒湯(せいはいはいどくとう) (軽症、中等症、重症患者)

中国で漢の時代より伝わる感染症に対する処方

日本のエキス剤には存在しないが、次の組合せで代用可能。

●麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)

●胃苓湯(いれいとう)(=●平胃散(へいいさん)+●五苓散(ごれいさん)

●小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)

を同時に服用

  • 3.軽症型

軽症型は倦怠感が主体で、画像では肺炎症状が出ていないもの。

1).胃腸が不調の場合

日本のエキス剤では、

●香蘇散(こうそさん)

●平胃散(へいいさん)

(上 2 剤を一緒に服用)で代用

2).発熱を伴う場合

日本のエキス剤では、

●黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、 もしくは

●清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)、もしくは

●荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)

もしく はこれらの組み合わせで代用

3).悪寒を伴う場合

エキス剤では、

通常は健康な成人や小児

●葛根湯(かっこんとう)、もしくは

●麻黄湯(まおうとう)

高齢者や倦怠感が強い患者

●麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)

葛根湯は、肺炎を防ぐ可能性が期待されている。

  • 4).普通型の軽症

【1】肺機能低下(寒さや過剰な水分が原因)

エキス剤の場合、

●麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)

●参蘇飲(じんそいん)

●平胃散(へいいさん)

以上 3 剤を一緒に服用

消化器症状が無いか軽度なら

●越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)

●麻黄湯(まおうとう)

上記 2 剤を一緒に服用

【2】肺機能低下(暑さや過剰な水分が原因)

エキス剤の場合、

●荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)

●半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

左 2 剤を一緒に服用

消化器症状が強ければ、

●柴苓湯(さいれいとう)

●平胃散(へいいさん)

上2 剤を 一緒に服用

  • 5).重症の場合

【1】重度の肺機能低下(重度の過剰な水分が原因)

エキス剤の場合、

●麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)

●竹筎温胆湯(ちくじょうんたんとう)

ヨクイニン

上 3 剤を一 緒に服用
便秘がある場合には、

上記 3 剤+大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)

【2】重度の肺機能障害(寒さと過剰な水分が原因)

エキス剤の場合
五積散(ごせきさん)(通常の倍量)

  • 6).重症例

【1】重度の肺機能低下 (熱、咳、痰、呼吸困難など)

エキス剤の場合

●麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)

●五積散(ごせきさん)

●大承気湯(だいしょうきとう)

上3 剤を一緒に服 用

吸痰困難の場合

●竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう)

●柴陥湯(さいかんとう)

上 2 剤を一 緒に服用

【2】重度の肺機能障害(喉が渇く、呼吸が切迫、意識がもうろう、出血など)

エキス剤の場合
●荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)

●滋陰降火湯(じいんこうかとう)

●桔梗石膏(ききょうせっこう)

以上 3 剤を一緒 に服用

  • 7).重篤例

呼吸困難で、人工呼吸器に頼るような状態

エキス剤の場合
竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう)

●柴陥湯(さいかんとう

上 2 剤を一緒に服用

腹満・便秘・煩躁を伴う場合

●大承気湯(だいしょうきとう)

■中医学治療の有効性

項目 漢方薬併用

(34例)
現在医療のみ

(18例)
P値
他の症状消29(87.9%)7(53.8%)0.034
CT改善率30(88.2%)12(68.8%)0.041
臨床完治32(94.1%)11(61.1%)0.009
普通型から重症型に悪化する2(5.9%)6(33.3%)0.027
転院3(8.8%)4(22.2%)0.358
死亡01(5.6%)0.346
有害事象発生001

清肺排毒湯

投与開始 3 日後

30%の症例で咳嗽が消失

86.6%が解熱

COVID-19 に対する清肺排毒湯の効果的 な治癒率は 90%以上

とこのレポートは報告している。

注意1:1.予防にある漢方薬は人参等を含む補気剤であるので、風邪などの邪があるときには中止した方がよい。特にひきはじめの悪寒や熱が出ている時は注意が必要。また、血圧が高くなる傾向や不眠がひどくなる場合もあるので気をつけて服用したほうがいい。

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